退職後のつぶやき(27)

  「退職後のつぶやき、変身願望」

 中学までは学校の成績はまあまあだったのに、高校(鶴城高校の3年生)になってどんどん成績が下がって行く。入試までもう半年を切っている。自分の成績どこまで下がるのか?、半分もうやけくそって感じ。二人の兄が優秀だったので、親からは兄といつも比較されて参っていた。運動神経は鈍いし、(昔は痩せていたのに)太ってしまい、2つ年上の姉からは、大学受験の前に太ったのはうちの家ではあんだだけよと言われる始末。きれいな女性の前だと顔が真っ赤になって何も言えない状態になってしまう。自分の周りにはガールフレンドを持っている男友達は多いのに、自分なんて今までもなかったし、今からも不可能って感じ。アフリカのケニアかガーナにその内行って動物と大自然に囲まれて、時間に何ら束縛されず、太陽が上がれば起き、太陽が沈めば寝てのんびりと自分なりに生きたいと言うのが本音。昔、母が佐伯の西田病院でナースをしていて医者にも憧れたことがあったが、この成績では医者のいの字も周囲に言えない。何も取りえがなくてコンプレックスの塊だが、もう共通一次まで3カ月しかない。この成績ではまともな大学なんてどこも受かりそうにないし、浪人は確実。しかし何故かやる気が起きなく、ただ時間が過ぎて行くって感じになっている。
 毎日、「どうしてもやる気の出ない症候群」にかかって過ごしていた。それも重症で。ある日の夕方、自分の部屋のベッドで弥生町で行われたコスモス祭りの時に太極拳の曲として流れていた「弥生賛歌」を聞きながら、ちょっと横になってしまったら、普段着のままそのまま寝入ってしまった。夢を見た。島田陽子と長山洋子を足して2で割った感じの顔立ちで、髪の長いすらっとしたスタイルで、面長顔のきれいな女性が現れて来て、ファティマの予言って感じでお告げを自分にしてくれた、・・・「今から、貴方に、超能力を与えます。但し、3カ月だけです。」それだけ言うと急にスッといなくなって、気が付くといつもの様に朝、目が覚めていた。
 目が覚めて見ると、何か様子が違う感じだ。体が軽くなった感じだ。学校に行くと英語の予習もしていないのに当てられても難しい訳がスラスラと早口で出て来て先生もビックリしている。体育の時間、マラソンだったが、いつもクラスでビリに近い方だったが、今日は息が切れる感じがなく、ずっとトップ集団で(それも飛び抜けてトップで)走れる感じになっている。急にトップで走るのも何か今までのことがあるので気が引けてやむなく2番でゴールインする。周りがビックリしている。「田原、どこで練習したんか?実力を出し切っていなかったのか、スゲェーナー、誰かに特別教わっているのか?」と聞いてくる。「マァ、ちょっと知ってる人がいて、・・・」とか何とか言ってごまかしていた。翌日の(前回、故意に受けていなくて久々の模擬試験)実力試験、不得手の国語が自然に答えがスラスラ出て来る感じになって、いつも時間が足りなくて苦しんでいたのに初めの30分の間で答えが最後まで書けてしまった。結果は学年で2番。周りの人の自分に対する反応が明らかに違う。
 夕方になるとお腹がすいて我慢することが出来なかったのに、不思議にそれが出来る様になっていて、どんどん体重が減少して行き、スマートになってくる。ちょっと遊び心でしたNHKの英語以外の語学の勉強が面白くなってしまって、多国語で結構いろんな言葉が話せる様になっている。あれほど難儀していた英会話が、突然1級程度の能力になっていて、英語のニュースも殆ど理解できる様になっている。どうして、どうして、・・・。夢か、しかし、つかの間の夢でもいいか・・・。
 親も教師も、そして一番気にしていた女性の目も、以前とははっきりと違っていた。休み時間、廊下で自分を見つめている女性もいる。案の常、サインして下さい何て言う女性まで現れて来た。それも、多くの男性の憧れの的の早乙女美子(さおとめよしこ)さんからも。腕力も付いてきた感じで、喧嘩しても負けそうな感じがしない。それが相手にも分かったのか、喧嘩が一番強いと言われている男までも、自分に敬語を使ってくる様になった。
 1カ月、バラ色って感じで時が過ぎてしまった。しかし、ずっと気にして来たことだが、3カ月を経ってしまえば、自分の超能力は消えてしまう。せっかく、好きだった娘にも自分の思いが言えて、手までちょっと触れることが出来たのに(もう少しで、キスまでも夢ではなかった感じになっていたのに)。英語だけでなく、フランス語もドイツ語もスワヒリ語もロシア語も困らない程度にまで出来る様になっているのに、又、あのどじで頭の悪い視野の狭い運動神経の鈍い何をしても自信の持てない、いつもの自分に戻ってしまうのか。もう、あの娘にも気軽に話せなくなってしまう。いつもの自分に戻れば好きになってくれる訳がない。今までと一緒なのは、体重が少し減ったことぐらいのものだ。
 しかし、この満たされた今の姿をどうしても失いたくない。少しでもいいから、今の姿に近付ける様に努力してみたらどうだろうか。少しでも、近い姿になれれば、・・・そう思い直して、半分諦めた感じでも自分なりに頑張ってみようと思う様なった。元に戻って元々、今までいい思いをしただけそれだけでも満足すべきだ。そう思うと踏ん切りが付いた。
 踏ん切りが付いてからは開き直った感じになって、自分なりに一生懸命に頑張った。本当に良く頑張った。朝3時に起き、予習を徹底的にし、夕方はジョギングをして体を鍛えた。最後まで見ようと思っていた木曜夜の(将来こんなドクターになれたらいいなあと憧れている)「続・柊又三郎」のドラマを見るのも、(獣医が自分に似ていると周りから言われている)「義務と演技」のドラマを見るのも我慢して、夜の8時過ぎには昼間の忙しさと全く逆な感じで眠りに就いていた。気が付くと、その後ほぼ自分の緻密なスケジュール通りに行動していた。全ての事に対して、常に平静なる気持ちで、常にプラス思考で、怒ることなく落胆することなく、自信過剰になることなく、謙虚で礼儀正しく多くのことに感謝して。
 時は無常に過ぎて行った。お告げがあって、ちょうどまる3か月が終わり、正に4カ月目に入ろうとする夜(ちょど0時に)、夢の中で、今度も前と同じ女性が出て来た。少し肌の色が前よりも黒くなっている様に感じた。鹿児島弁で、「ようきばいやった。よかにせどん。私が与えた力は、まる2カ月半でございもうした。後の2週間のは、おまんさのちからでございもす」、そう言うとサッと消えてしまった。
 翌朝、目が覚めて授業を受けると、(出来る)自分と何ら変わっていない。頬を真剣につねっても確かに痛い。それからしばらくして、片想いで諦めていた女性から告白めいたラブレターをもらい、夢にまで見た国立の医学部に合格することが出来た。

 以上は、私が過去に書いたもので、作り話です。笑って頂ければ、嬉しいです。

 (令和3年10月17日、再掲)

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